ポリマー資本主義 ― 経済の血流に流れるプラスチックと、私の手の中の布

プラスチックは、経済の血流になった

最近、ふと考えます。
私たちはプラスチックを「使っている」と思っているけれど、本当はその中で「生かされている」のではないかな、と。

スーパーに行けば、野菜も肉も一つひとつ薄い膜に包まれて並んでいて
物流、医療、IT機器、建築資材——どの産業もプラスチックなしでは止まってしまう。
それはもう“素材”ではなくて、経済の血流のようなものだなと。

OECDの報告によると、世界のプラスチックの4割は包装に使われ、寿命は1年未満。
その短い命のために、巨大な石油産業と流通システムが動いています。
経済は、プラスチックの効率に依存して回っていて
「脱プラスチック」と声を上げても、私たちの生活自体がその回路の中にあります。


ポリマーの世紀に生きる

地質学者たちは、いま地球の岩の中に“プラスチックを含む地層”を発見しています。
海岸の岩に、ビニール片やペットボトルの樹脂が溶け込み、
「プラスチック岩」と呼ばれるものが生まれているといいます。
(Science Advances, 2023)

それを知ったとき、これって現実??と背筋が少し冷たくなりました。
人間の作り出した物質が、地球そのものの一部になっていく。


私たちは経済を動かしているつもりで、
実は地球の“物質循環”の中に深く組み込まれているのではないか。

プラスチックは、私たちの欲望と効率の結果で、
この時代を刻む地球の記憶になってるのかな。


脱プラではなく、再設計するという発想

だから、私は「プラスチックを悪者にする」ことには、もう違和感があります。
必要なのは“敵視”ではなく、“関係の再設計”。見方を変えていくことが新しいことを見出すかもしれません。

UNEPの報告書「Turning off the Tap」(2023)は、
2030年までにプラスチック汚染を80%削減できると試算しています。


その方法は“素材の置き換え”ではなく、
「再利用」「再設計」「再発想」という3つの転換。


問題の中心は“プラスチックという素材”ではなく、


「一度使って捨てる」という人間の思考パターン


つまり、“時間の切り捨て”こそが環境を壊しているということ。


蜜蝋ラップという「時間を取り戻す布」

私はオーガニックの蜜蝋ラップを作っています。
それは「脱プラスチック製品です」と言えば簡単ですが、
私にとってはもっと静かで、もっと深い意味があります。

オーガニック蜜蝋ラップを洗い、干し、また使うとき、

“使い捨て”が日常になった社会で、
“何度も使う”という当たり前の動作を取り戻しています。

それは小さな布だけれど、
経済の速度を一瞬だけ止めて、
「人と物が丁寧に関わる」という時間を取り戻すことでもある。

幸いなことに私の周りにこの「人と物が丁寧に関わる」という時間を取り戻す活動にかかわっている人がたくさん。

私にとって蜜蝋ラップは、
プラスチックの世界に反抗するのではなくて、
“違う速度で生きる選択”を静かに示しているということなのかも。


経済と地球のあいだで、生き方をデザインする

プラスチックは、もはや避けることのできない現実。
それは地球の新しい地殻であり、私たちの経済活動の血流でもある。

ならば私たちは、それとどう共存して、
どんな形で“次の関係”を築くのか。

「一度使って捨てる」という人間の思考パターン


それが今問われている。


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