里山の「捨てるもの」が、暮らしの道具に変わっています

手仕事や素材のことを調べていると、思いがけない場所で「もったいない」の連鎖に出会うことがあります。

今回ご紹介するのは、里山から生まれたアップサイクルの事例です。

廃棄寸前だった素材が、丁寧な目と技術によって暮らしの道具に変わっていく過程は、ものづくりに関心のある方にはきっと興味深く映ると思います。

里山の素材が「廃棄物」になってしまった背景

里山とは、人の暮らしに近い山や森のことです。かつては竹を竹細工に、木を炭に、草を肥料に——すべてが何かに使われていました。素材を使い切ることが、暮らしの前提にあったのです。

ところが現代では、その里山が逆に処分に困る場所になっています。

手入れされない竹林はどんどん広がり、間伐材は伐っても売れず放置され、古民家の廃材は解体のたびにゴミになります。かつて資源だったものが、コストのかかる廃棄物になってしまいました。

その現状を、素材と向き合う人たちが少しずつ変えています。


事例① 竹→日用品「竹虎(高知県須崎市)」

高知県須崎市の山里にしか育たない「虎斑竹(とらふだけ)」。この珍しい竹を守り続けてきた老舗「竹虎(株式会社山岸竹材店)」は、創業明治27年から変わらず、竹林を自ら手入れしながら竹細工・竹炭・竹繊維製品などの日用品を作り続けています。

伐採から加工まですべて職人の手作業で、竹を使い切る姿勢を100年以上守り続けていることが特徴です。竹林を適切に管理し続けることが、そのまま商品になる。保全と事業が一体になった、アップサイクルの原点のような取り組みだと思います。

https://www.instagram.com/taketora1894


例② 杉の樹皮→天然染料インク「文染・岸田木材(富山)」

木材として使われる幹と異なり、製材時に剥がれる樹皮は、これまでほぼ廃棄されてきました。

富山県氷見市の製材所「岸田木材」は、その杉の皮から天然染料を抽出し、筆記具ブランド「文染」と共同で「ひみ里山杉からできたインク」を開発しました。化学染料にはない深みのある色合いが生まれ、つけペンとセットで販売されています。

「木は幹だけではない」という視点の転換が、新しい素材市場を開いた事例です。製材所と文具メーカーという、異業種の出会いから生まれたところも興味深いです。


事例③ 里山の間伐材→飲食の道具「木(食)人(長野県軽井沢)」

軽井沢の離山を拠点に活動するプロジェクト「TŌGE」は、里山の管理として行ってきた間伐材の活用方法を長年模索していました。そこに日本中の里山植物を研究する「日本草木研究所」が加わり、生まれたブランドが「木(食)人」です。

里山を整備する過程で出た木を「食べる」という発想で、木から抽出した成分をドリンクやスパイスとして製品化しています。「間伐しなければならないから木を切る、ではなく、木を使いたいという好奇心から森に向き合う」という姿勢が、持続可能な里山管理につながっているとお二人は語っています。

https://www.toge.art/toge-5-mokushokujin


事例④ 工場の木くず→合板パネル(間伐材の連鎖)

これまで廃棄処分・焼却されていたその木くずを合板パネルにアップサイクルする取り組みが生まれています。

里山で伐られた間伐材の削りくずがまた別の建材になる。素材が形を変えながら使い切られていく連鎖は、かつての里山の暮らし方そのものだと感じます。

素材と向き合う目を、自分の町で育てていく

4つの事例に共通しているのは、「これは廃棄物だ」という思い込みを誰かが一度疑ったところから始まっているということです。

特別な技術や資金より先に、視点の転換がある。そしてその視点は、誰でも持てるものだと思っています。

実際、私の暮らす大分県宇佐市安心院町でも、高校生が「野菜クレヨン」を発案するという出来事がありました。

規格外の野菜や使われない農産物を色の素材として見立てた、とても瑞々しいアイデアです。

驚いたのは、そのアイデアを「面白いね」で終わらせず、本気で形にしようとする大人たちが周りにいたことです。

若い発想を受け止めて、具現化まで伴走できる環境があること。それ自体が、安心院という土地の豊かさだと感じました。

里山に何があるのか。どんな植物が育ち、どんな廃材が出て、どんな知恵が残っているのか。そこを丁寧に探っていくことが、次のものづくりへの入口になると感じています。

高校生のアイデアに刺激を受けて、私自身もやってみたいことが出てきました。地域の宝と何かを掛け合わせて、安心院ならではのものづくりを探求していく。その過程も、このブログでお伝えしていけたらと思っています。

まずは、歩いてみるところから。

そういった探求の中で、私が辿り着いた素材のひとつが蜜蝋です。里山の植物とミツバチが育む蜜蝋は、暮らしの道具として何百年も使われてきたもの。その蜜蝋を使ったラップを、このサイトでお届けしています。

よかったら、ご覧になってみてください。

→ 蜜蝋ラップを見る