装飾を削ぎ落とした、オーガニックという選択
私は、蜜蝋ラップを作る素材として、オーガニック認証を受けた無地の布だけを使っています。 巷には可愛らしい柄物があふれていますが、あえて無地でと考えているからです。
始動はじめは柄のものなど扱っていました。いろいろと布の生産や環境、さまざまな事例を学び、吟味しそぎ落として今の形になっています。
シンプルであればあるほど、素材の質と制作の丁寧さがそのまま使い手に伝わります。
また、無地であることは、キッチンという日常の風景に静かに溶け込み、主役である食材を引き立てるということでもあります。
誤魔化しがきかないからこそ、この一枚を選び、一枚ずつ仕上げることに集中しています。
「売って終わり」にしない、作り手の覚悟
手仕事を「生業」にしている以上、作って終わり、売って終わりという考えはありません。
私が制作と同じくらい、あるいはそれ以上に大切にしているのは、その後の「相談」を受ける時間です。
今の時代、ものはボタン一つで簡単に手に入ります。
しかし、その道具がうまく扱えなくなったとき、あるいは少し古びてきたとき、誰に頼ればいいか分からず、結局捨てられてしまうことも多いはずです。
「最近、コーティングが薄れてきた気がする」
「使い始めの頃のようにうまく包めない」
そんなとき、真っ先に私の顔を思い出してもらえる存在でありたい。「あの人に聞けば解決する」という安心感までを含めて、私の仕事だと思っています。
布を一度引き取り、命を吹き込み直す
具体的に、私のところでは、お使いの布に元気がなくなってきたら一度こちらで引き取っています。そして、私自身の手でもう一度蜜蝋をコーティングし直して、またあなたの元へお返しします。
もちろん、新しく買い換えるのは簡単です。その方が効率的だと言う人もいるでしょう。 けれど、せっかくあなたの手に馴染んだその布を、メンテナンスしてまた長く使い続ける。そのプロセスにこそ、わざわざ手仕事の道具を選び、暮らしに取り入れる本当の価値があると思うのです。
布が育ち、使い手との間に歴史が生まれる。その手助けをすることが、作り手としての私の責任です。
効率よりも、唯一無二の対話を
一人ひとりの困りごとに直接向き合い、預かって、手を入れ、また戻す。 この一連のやり取りは、決して効率の良いものではありません。しかし、この温度の通ったやり取りこそが、大量生産品にはない、私にしかできない仕事のあり方だと確信しています。
オーガニックの布に、確かな安心を乗せて。 もし、あなたの手元にある布がくたびれてきたら、いつでも遠慮なく連絡をください。 私はいつだってここで、あなたの一枚が何度でも使える状態に戻るのを待っています。
