ゼロウェイストというと、「我慢する」「不便になる」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。けれど、海外の暮らしを覗いてみると、その常識はまったく当てはまりません。
むしろ、ゼロウェイストは“美しく暮らすための方法”であり、“自分のスタイルを作るカルチャー”として受け入れられています。
SNSでは、部屋の一角やキッチンの棚、外出時の持ち物ひとつひとつが絵になるような、スタイリッシュなゼロウェイスト生活を送る人たちが注目を集めています。
彼らは、環境のために無理をしているのではなく、「好きだから続けている」という自然体の雰囲気をまとっており、そこにこそ憧れを感じるのかもしれません。
海外のゼロウェイスト文化は、派手さではなく、静かで美しい“品のある生活の工夫”が魅力です。物が少なく、素材が長持ちし、ときには手を加えて育てていく──そんな暮らし方そのものに、かっこよさが宿っています。
それでは、そんな海外の人々が日常で実践している、ちょっと真似したくなるゼロウェイスト習慣を、分野ごとに掘り下げて紹介していきます。
キッチンのかっこいいゼロウェイスト習慣
海外のゼロウェイスト生活でまず印象に残るのは、キッチンの“見せ方”です。
調味料や乾物は色とりどりのガラス瓶に移し替えられ、ラベルも最小限。棚に無造作に並べただけなのに、まるで写真集の1ページのように整って見えます。プラスチックの袋や派手なパッケージがないだけで、キッチン全体が静かで落ち着いた空間に変わるのです。
食材の使い切りも上手です。
たとえば、野菜の皮や芯。日本ではつい捨ててしまいがちな部分も、海外のゼロウェイスト実践者にとっては“次の料理の素材”。大きな鍋に水と一緒に入れて火にかけ、数時間コトコト煮込めば、深い味の出汁(ブロス)が完成します。
週末の朝、ゆっくり時間をかけてブロスを仕込むのは、彼らにとってちょっとしたリチュアル(=儀式)。暮らしを整える時間として楽しまれています。
また、生ゴミをそのまま捨てず、キッチン脇に小さな“コンポストボウル”を置く家庭も多くあります。木製の蓋や陶器の容器はインテリアに自然となじみ、生活感が出にくいのが魅力です。調理中に出た皮やコーヒーかすをそこに入れていくと、不思議と台所の雰囲気まで丁寧になるように感じられます。
キッチンペーパーの代わりに布を使う習慣も定着しています。スウェーデンのキッチンスポンジクロスのような、薄くて乾きやすい布を数枚揃え、用途ごとに色を変えておく。そんな小さな工夫だけで、日々の家事が少しだけ軽やかになり、見た目にも整った印象になります。ここは私も製品化しておしゃれかっこいい感じで発信したいと目論んでます!
海外のキッチンが“かっこいい”理由は、特別なものを使っているからではありません。余計なものを持たず、できることを静かに続けていく。その積み重ねが暮らしに滲み、自然と美しい空気をまとい始めるのです。
バスルームのミニマル&スタイリッシュなゼロウェイスト
海外のゼロウェイスト生活で印象的なのは、バスルームが驚くほど静かで清潔に見えること。
ボトルやチューブが並びがちな洗面台も、彼らの手にかかるとまるで小さなホテルのよう。多くの人が取り入れているのが、固形シャンプーや石鹸を使うスタイルです。石鹸の形もバスルームの景色をつくる大切な要素。丸いもの、四角いもの、色合いがやさしいもの…。
お気に入りをトレーに並べるだけで、装飾を加えなくても上質な雰囲気が漂います。
液体ソープのプラスチック容器を持たない代わりに、ステンレス製や琥珀色のガラス容器をひとつ置き、そこに自分で作ったシンプルな洗剤を詰め替えて使う人もいます。ラベルは貼らず、容器そのものの佇まいを楽しむ。こうした“余白のある空間”が、バスルームに心地よい静けさをつくり出します。
メイク落としやスキンケアも、できるだけ無駄の出ない習慣が根付いています。使い捨てのコットンパッドの代わりに、柔らかい布でできたウォッシャブルパッドを使い回し、洗面台に小さな籐かごを置いて収納。洗ってまた並べるたびに、どこか丁寧な気持ちになれるのです。うちもこれは製品化して限定数で販売しました。また機会があれば復刻したいです✌

さらに、数多くの美容アイテムを揃えるのではなく、「ひとつで全身に使える万能オイル」を選ぶのも海外流。ボトルがひとつ減るだけで棚がすっきりし、色味が揃うことで空間ががらりと整います。ものを減らすことは、見た目だけでなく、心のざわつきを減らすことにもつながる——そんな哲学が、自然と生活に溶け込んでいるようです。
バスルームは朝晩必ず訪れる場所だからこそ、“何もなくても美しい”状態を保つだけで、気持ちが大きく変わります。海外のゼロウェイストの魅力は、片付けより先に“美しい癖”を身につけることなのかもしれません。
外出時のおしゃれなゼロウェイスト習慣
海外でゼロウェイストを実践する人たちの外出スタイルには、どこか“冒険に出る人”のような雰囲気があります。無駄なものを持ち歩かず、本当に必要なものだけを丁寧に選び取る。その身軽さが、自然と姿勢や歩き方にまで現れ、洗練された印象をつくり出します。
象徴的なのが、マイボトルやカップの持ち歩き方。北欧では、ストラップ付きのボトルホルダーにお気に入りのボトルを入れ、アクセサリーのように肩から下げて出かける若者が増えています。色使いは控えめなのに、どこか凛としている。ボトルを持つことが“エコ活動”というより、“スタイルの一部”として根付いているのが印象的です。
また、折りたたみ式のカップや、チタン製のカトラリーをポーチに忍ばせている人も多く見かけます。軽くて丈夫な道具には、どこかアウトドアギアのような雰囲気があり、持っているだけで気持ちが引き締まるような魅力があります。必要以上に荷物を持ち歩かないミニマルさと、機能的な美しさが共存しており、まるで“選び抜かれた日常の装備”といった感じです。

バッグの中身が少ないのも特徴です。財布は薄く、ポーチは小さく、持ち物は最小限。海外では「EDC(Everyday Carry)」という日常の持ち物にこだわる文化がありますが、ゼロウェイストを実践する人々のEDCはとてもシンプル。それぞれのアイテムには役割があり、“ただなんとなく”入っているものがありません。この統一感が、暮らしそのものを引き締め、洗練された印象を作り上げています。
テイクアウトをする場合も、薄型のステンレス容器やシリコン製のコンテナをさっと取り出せるように準備してあります。お店でも堂々と渡し、むしろその姿勢を誇りに感じているように見えるほど。ゼロウェイストが恥ずかしいものではなく、むしろ“クールな選択”として浸透していることがよくわかります。
外出時のゼロウェイストの魅力は、“持ち物に物語があること”。自分が選んだ、長く使える、信頼できる道具。数は少ないのに、その人の価値観がぎゅっと詰まっていて、静かなかっこよさがにじみ出るのです。

リビングでの洗練されたゼロウェイスト習慣
海外のリビングには、どこか余白のある静けさがあります。必要最低限のものだけが置かれ、ひとつひとつのアイテムがゆったりと呼吸しているような空気。その美しさは、単に“物が少ない”だけではなく、扱い方や選び方に哲学があるから生まれるものです。
まず目に入るのは収納。派手なプラスチックケースは避け、リネンやウッド、ラタンなど自然素材のボックスを使うことで、生活感をやわらかく包み込んでいます。隠すために使うのではなく、素材そのものが部屋になじみ、景色を整える役割を果たしているのです。色味も白、ベージュ、グレーなど抑えたトーンで統一されていて、空間全体に落ち着きが生まれます。
紙類の扱いも上手です。郵便物や書類はすぐにデジタル化し、物理的に“紙がたまる場所”を作らない。散らかりやすいテーブルの上には、本当に気に入った花瓶やキャンドルだけを置き、余白の美しさを楽しんでいます。この“置かない勇気”が、ゼロウェイストの根底にある丁寧さにつながっているのでしょう。
さらに面白いのは、捨てられがちな素材をインテリアに取り込む工夫です。たとえば、空き瓶にドライフラワーを挿して窓際に並べたり、不要になった布を小さなコースターに縫い直したり。“使い切るためのひと手間”がそのまま暮らしのアクセントになり、部屋に温かさとストーリーを与えてくれます。
香りにも無駄がありません。合成香料のディフューザーをいくつも置くのではなく、小さなガラス瓶に天然オイルを少量垂らし、木や石をディフューザー代わりにする。香りが強すぎず、ほんのりと漂う程度が好まれています。控えめで自然な香りは、部屋の空気を軽くし、住む人の心まで静かに整えてくれます。
そして何より印象的なのが、物が増えない習慣そのものです。毎日、ほんの数分だけ部屋を見渡し、「今日は何を増やさずに済んだだろう?」と振り返る。捨てるための片付けではなく、“増やさないための暮らし方”を大切にする姿勢が、ゼロウェイストの美しさを支えています。
海外のゼロウェイストリビングは、完璧を目指していません。むしろ、ゆるやかで、自然体で、余白と素材感を楽しむ。それが結果として、静かに洗練された空間を生み出しているのです。

ファッションに取り入れる“さりげないゼロウェイスト”
海外のゼロウェイスト実践者のファッションには、派手さや過度な主張はありません。それでもどこか「かっこいい」「センスがいい」と感じるのは、選び方と着こなし方に“軸”があるからです。
まず特徴的なのが、色を絞ったワードローブ。白、黒、ベージュ、カーキ、グレーといったニュートラルカラーが中心で、どれを組み合わせても自然にまとまりが出るように考えられています。色を抑えると、必然的にアイテム数も少なくて済むため、クローゼットはいつも余白たっぷり。服がぎゅうぎゅうに詰まっていない光景は、それだけで暮らし全体に落ち着きを与えます。
また、古着をとても上手に取り入れています。ヴィンテージのデニムやレザージャケットを、あえて上質なアイテムと合わせることで“味”と“品”が同居し、独特の雰囲気を生み出します。服そのものの歴史をまとっているようで、ただのリサイクルではなく“スタイルの一部”として機能しているのが印象的です。
さらに、彼らのワードローブで重要なのが「メンテナンスできるかどうか」という視点。靴やバッグは、使い捨てではなく、修理しながら長く付き合えるものを選ぶ。革専門の修理店に持ち込んだり、自分でオイルを塗ってケアしたりする時間を楽しんでいます。この“手をかける喜び”こそが、ゼロウェイスト的なかっこよさの根底にあるのかもしれません。
服の数が少ない代わりに、小物を効果的に使うのも海外流です。季節ごとに大量の服を買い替えるのではなく、スカーフや帽子、ベルトといったアクセサリーで変化をつける。必要なものは増やさず、その日の気分を軽やかに表現する方法として、小物が活躍しています。
そして、素材選びにも“静かなこだわり”があります。オーガニックコットンやリネン、ウールのような天然素材を好むのはもちろん、タグが肌に当たらない「タグレス」の服を選ぶなど、着心地にも気を配っています。自分が心地よくいられるものを選ぶ姿勢は、流行よりも長く続く“個人の哲学”のようなものです。
海外のゼロウェイストファッションは、“持たないことを我慢している人”の姿ではありません。むしろ、「本当に好きなものだけを持つ」ことで生まれる洗練が、その人の内側から自然に滲み出ている。さりげないのに、惹かれる。そんな魅力があるのです。
家庭でのちょっとかっこいい工夫
海外のゼロウェイスト生活を見ていると、「これなら自分もやってみたい」と思わせてくれる、さりげない工夫がたくさんあります。そのどれもが、とても日常的で、肩の力の抜けたスタイルです。
たとえば、朝のコーヒー。飲み終わったあとに残るコーヒーかすを、そのままゴミ箱に捨ててしまうのはもったいないという発想から、消臭剤として玄関に置いたり、シンクの掃除に使ったりします。コーヒーの香りがほんのり残り、暮らしのリズムさえ少し豊かになるような感覚があります。ものを“使い切る”という行為が、どこかバリスタの所作のようにかっこよく感じられます。
また、古くなった布をただ処分するのではなく、キッチンクロスや小さな袋に縫い直す文化も根付いています。お気に入りの色や柄でいくつか揃え、用途ごとに使い分ける。手間がかかるように思えるけれど、一度作れば味わいが生まれ、むしろ自分の生活が“育っていく”感じが心地よく、長く続ける人が多いのだそうです。
夜の過ごし方にも、小さなゼロウェイストが潜んでいます。電気を消してキャンドルを灯し、柔らかい光の中で静かに過ごす時間。電気の節約というより、“余白のある夜”を楽しむための習慣です。布にくるまった蜜蝋キャンドルの温かみは、どんな最新家電にも出せない優しさがあります。
植物を暮らしに取り入れる人も多くいます。少し葉が落ちても、傾いても、それを“手間がかかるもの”ではなく“生きているものの魅力”として楽しむ姿勢があり、自然と家の中も柔らかな空気に包まれます。植物は空気をきれいにし、気分まで静めてくれる相棒のような存在です。
そして何より海外のゼロウェイスト生活に共通しているのは、物を「捨てる」ことより、「どう使い切るか」「どう手をかけるか」を大切にしている点です。大量に持たず、必要なものをしっかり使い切り、使えなくなったら新しい形に変える。その“循環する暮らし”が、自然と美しく、どこかかっこよく見えるのです。

ゼロウェイストは“我慢”ではなく“美学”として育つ
海外のゼロウェイスト文化を覗いてみると、そこには「頑張っている人」の気配よりも、「楽しんでいる人」の空気が広がっています。物を減らすことも、手をかけることも、使い切る工夫も、すべてが暮らしを整え、自分の美意識を育てるための行為として自然に根付いています。
彼らにとってゼロウェイストは、“何かを我慢する生活”ではありません。むしろ、余計なものを手放すことで、本当に好きなものが際立ち、暮らしのリズムまで軽やかになる。そんな“心地よさの発見”そのものです。
ガラス瓶の静かな佇まい、固形石鹸のシンプルな形、選び抜いたEDCのミニマルな美しさ、余白を大切にするリビング、小物で整えるワードローブ……。どれも派手ではないのに、人を惹きつける魅力があります。それは、物の数ではなく、暮らし方そのものに“スタイル”が宿っているからでしょう。
ゼロウェイストは環境のためだけのものではなく、自分の暮らしにどんな表情を足したいかを考えるきっかけにもなります。暮らしのどこか一角でも、今日の話に出てきた工夫をひとつ取り入れてみるだけで、空間の空気が静かに変わり始めます。
完璧を目指す必要はありません。丁寧すぎなくてもいい。大切なのは、自分が心地よいと感じる“小さな選択”を重ねること。その積み重ねが、自然と美しいゼロウェイストの暮らしへと育っていくのです。

